【完】黒薔薇の渇愛











見晴らしがいいと学生の俺でさえ耳にしたことがある某ホテルのレストラン。


重たいイスに凭れながら、味のしないランチを食べていた。


目の前には母さんの再婚相手とその娘さんがいる。


つまりは俺の義理の父と姉さんになる奴が目の前でひたすらニコニコしていて気持ちが悪い。



「桔梗君は綺麗な顔してるね、学校ではさぞかしモテてそうだね。
 恋人とか好きな子はいないの?」


「そういうのいらなーい。結婚するわけでもないんだから、やっちまったら関係なんて終わりでしょ。」


「こら桔梗!!」



下品な話で呆れてくれりゃいいものを。
相変わらず母さんの再婚相手はニコニコとイイ人面が眩しいねぇ……。


隣で愛想笑いをしている母さんが別人に見えた。


この人はきっと、父さんが死んで
ひとりぼっちが寂しくて
優しさに飢えていたに違いない。


だからこういう雰囲気が柔らかい、己の哀しみさえも包んでくれそうな人を選んだわけか。


いや、母さん引き取るとか聖母マリアかよ。



なーにが楽しくてこんな女といたいんだか。