【完】黒薔薇の渇愛






自分から手を伸ばしてまで、欲しいと思ったのは、誰かを求めたいっていう気持ちは初めてだったから。


制御の仕方がわからない。


だから……もし次桜木に会えたら。


言おうと思う。


包み隠さずこの気持ちを。



揺らいだ視界の先にある、彼と同じ名前が入っているお花、トルコキキョウの前で誓うように決心する。


きっと彼を見たら、"待て"なんてできなくなる。


そんな私の気持ちを利用する運命は心底……意地悪だと思った。


ーーだって。



ガラッと、静かな空間に響く病室のドアが開く音。



その視線の先には。



「……っ、」



いるわけがない、桜木が立っていた。