【完】黒薔薇の渇愛




「……っ」


花瓶に入っているお水だってまだ新しく変えていないのに、涙がでてくる。


ねえ、お兄ちゃん。


私フラれちゃったかも。


好きって気づいたのは最近なのに。
すぐ失恋しちゃうなんて……もうちょっとだけ夢見させてくれてもいいのにね。



「って……妹の失恋話なんて、お兄ちゃんだって聞きたくないよね」



ゴシゴシと乱暴に腕で涙を拭いてパイプ椅子から立ち上がる。


花瓶に入っているお花を取り出して、花瓶を洗い新しい水に変えてから、お花を戻す。



……そういえば、このお花。誰が持ってきたんだろう。



お母さんは昨日、お兄ちゃんを見に来たらしいけど
毎日お花持っていってるわけじゃないから。

それに昨日、お母さん家から出る時
お花なんか持っていなかった。


……病院に向かう途中でお花買ったとか?


それにしては、このお花。全然お母さんの趣味じゃない。


……そういえばお花どっかで見たことある。


なんだろう……確か。