【完】黒薔薇の渇愛








彼女がいる男に会おうなんて。
恋愛経験が少ない私にだって、それが邪魔でしかないことを知っている。


二日後、嫌でも思い知らされるのは、桜木への思いが萎むどころか……膨れ上がってく一方だってこと。



桜木と一緒にいた女の人。


痩せ細ってて、不健康そうには見えたけど。
ショートカットで綺麗な儚い人だった。


私とは真逆のタイプ……。


桜木だって私なんかより美人の方がいいに決まってるよね。



「はぁー……」


ソファに寝転びながら吐くため息は、どうやらテレビを観ているお母さんの邪魔をしていたみたいで。



「天音ったら、最近ため息多いんじゃないの……?
 なにか悩み事?
 ……お兄ちゃんが見たら心配するから、心配事があるなら相談しなさい」



「ううん……大丈夫。
 それよりお兄ちゃんのお見舞い行ってきてもいい?」


「いいけど。病室では静かにね」


「わかってるよ。」