「さーて、どうしたもんかねぇ……」



桜木はチクタクと振り子を揺らす時計のように、私と奏子を交互に見る。


すると少しのプライドも残していない奏子は勢いよくまた額をコンクリートにくっつけ、情けない姿を晒した。


「お願いします……見逃してください!!
 この女好きにしていいんでお願いします」


「君はその子のこと愛してたんじゃなかったのー?」


「でも……守らなきゃいけないものが他にあって……」


「それは自分のチーム?」


「……」


「そう……愛より男同士の友情が優先ですか、おめでたい。」



人差し指の第二関節を唇に当てながら、クツクツと肩を震わせながら笑う桜木。


桜木はゆっくり足を動かし、私の目の前でしゃがみ目を合わせる。



「ねぇ、天音ちゃん。
 俺君を好きにしていいんだって」



「なに言ってる……の。
 私の意思は……」


「そんなもんないよねー?
 だって愛しの奏子君が言ってるんだよ?
 あいつ信じた君が悪いじゃん、なのに今さら自分の意思……?」


「……」


「馬鹿も休み休み言えよ女」


「……っ」