「……まあ、自分の身内がってよりも……逢美の総長として黙っておくわけにはいかなかったんだよねー。舐められたら困るし」



冷たい現実を、まるで教科書を読んでいるかのようにスラスラと言ってのける桜木。


ブルリと、体が震える。


女を……売る?

奏子が?

言うことを聞かせて?


違う……だって奏子はいつだって優しくて

そんな人じゃ……ない。



「うそ……奏子はそんなことしない。
 全部あなたのうそでしょ?!
 騙されないんだから……っ」


吠える私をめんどくさそうに見る桜木は、ポリポリと頭を掻いた。



「まだ信じてるよこの子……。
 女の子(しつけ)るの上手だね~、奏子君は。」


桜木は軽く長い足を伸ばして、靴先を奏子の顎に当て顔を上に向かせた。



「さーてさて、どうしましょうこの男。」


「ひっ……!すみませんでした!!
 だってあの女があんたの家族だなんて知らなかったから……っ」


「うん、そうだね。
 知らなかったからできたことだよね。
 でもそれなら、そんな事しなければよかった話だよね。」


「……ごっ、ごめんなさい」


「言葉なんていらないよ。
 なにかちょうだい。
 良いものくれるなら、許してあげてもいいよ。」