「何に対して謝ってるのかな、岡本奏子くんは。
彼女を誘拐されたから、この場を乗り切るために仕方なく謝ってる?
……それとも別のことに対してかな??」
「……ぐっ」
顔を下に向けている奏子が、打ち付けるように涙をコンクリートに滲ませる。
奏子が泣いているところ、はじめて見た。
そのくらい、桜木の圧は自分が罪人なんじゃないかと錯覚してしまうほど重くのしかかる。
けど、だからって奏子がなにをしたっていうの。
「そ……奏子は悪くないんだから謝っちゃ……ダメだよ。
ねえ奏子……私のこと助けにきてくれたんだよね?
私のために……やめてよ、謝らないでよ奏子」
震える声でそう言っても、奏子は顔をあげてくれない。
桜木は奏子から私に目線を移した。
「ハッ……いい加減自分を助けにきたなんて思い込むのやめたら?天音ちゃん。
こいつはね、君のことなんかどうでもいいの」
ーーやだ。
「自分が助かりたがために、俺に土下座して謝ってんの?わかる」
ーーうそつき。
「こいつがしたこと……教えてあげる。
こいつはね、弱っている女を助けては、自分に惚れさせて言うこと聞かせる最低な男だよ」
「なに言って……」
「自分の女に"売り"させてんの。
そこら辺を歩いている男どもに彼女売ってさ、お金荒稼ぎしてんの」
「……奏子がそんなことするわけないでしょ」
「……まだ庇うんだー。
現実見れてない証拠なんじゃなーい。
てか、別にこいつが自分の女売ろうが俺にはどうだっていいことなんだけど」
「……」
「俺の姉さん売られたんじゃ、身内として黙っておくわけにはいかないんじゃん?」
「ーーッ!?」