【完】黒薔薇の渇愛






「ねえ、優理花」



桜木が私から離れ、優理花さんの前に立つ。


居場所すらも与えてくれそうな、強い男の手が
優しく優理花さんの頬に触れたとき、まるで花に愛情を与えている様にも見える。


さっきまで、私に触れていたくせに……と。


思ってしまうのは、どうしてだろう。


特別が欲しいと思った。


桜木の特別は……私に向いているんじゃないかって……思っていた。


けどその手は誰のものでもない。



そして、甘い幻想はここまでだ。


「俺のこと『好きにならない』って……小さい頃そう言ったから、今こうして一緒にいるのが分からない?」


「……っ」


「約束も守れないようなつまんない女に、興味はないよ。」



画になるふたり。
しかし見せられている現実はとても残酷で。



傷ついている優理花さんの顔が
奏子の時の自分と重なって見えた。



ーーだから。