【完】黒薔薇の渇愛







ちゃんと言っても結局ダメじゃん。


熱が顔に集中する。


細く見えて引き締まった桜木の体に、何回男を感じれば気が済むんだろう。


助けを求めるようにすぐ近くにいる朱光さんを見るけど、彼は速攻で目を逸らした。


多分……さっき屁理屈に桜木に怒られたから下手に私と関わりたくないんだと思う。


それなら、桜木に強く言える雪羽さんなら助けてくれそうだと、希望を捨てていない目は彼の方を見るけど。


雪羽さんもまた、『諦めろ』と私を見ていた。



「ひっ……!?」


首の後ろにひんやりとした感触。

助けを求めるのに必死すぎて、ある意味無防備でいた。


桜木は薄く開いた唇を、私の首の後ろにくっつけている。



「こんな時に他の男見るなんて、随分余裕なんだねー……ねぇ天音ちゃん」


普段おちゃらけている声色とは違って、急に低くなる桜木の声にビクッと体が震える。



「なーに、首の後ろにキスされるより。
 俺の言葉に感じちゃった?」


「……っ」


「好きものだねー、天音ちゃん」