【完】黒薔薇の渇愛






「くしゅ……!」


さっきの緊張感から解放されたのと、夜風を浴びすぎたせいで、むず痒かった鼻から遠慮なくくしゃみがでる。



ズビッと鼻をすすると、桜木が着ていた黒色のアウターを脱いで私に被せた。


それだけなら、普段しない気遣いをする桜木に"かっこいい"って素直に思えたのに。


「ん」


桜木は目を瞑り両手を広げる。


私は目を丸くして、一瞬言葉を失ったけど
遠慮がちに口を開く。



「え……っと、その手はなんですか?」


「決まってるでしょ。温めてあげるからおいで」


「……っ、いや、大丈夫だからっ」


「えー、なんで」



なんでと言われましても……

手広げられられたから、じゃあ抱きつこう。とはならないでしょ!


目を逸らしながら、逃げようとするけど。



「天音ちゃんに上着貸して寒いから。
じゃあ俺が温めてもらおーっと」



言いながら、ギュッと後ろから抱きついてくる桜木に、言葉にならない声をあげる。



「捕まえたー」


「あっ、あの、はな……離して」


「ちゃんと喋んなきゃ、なに言ってるか分かんないよねー」


「離し……て」
 

「嫌だ」


「……っ」