【完】黒薔薇の渇愛





冷たい桜木の声が熱を含んだとき。

その言葉に、どう反応していいのか分からなくなる。

らしくない桜木の言葉に、ピシリと。この場にいる全員が固まった時。

空気を読まずに動き出す桜木は、私から朱光さんに視線を渡した。



「俺はね~、朱光。
 やーっとのことで天音ちゃんに懐かれたわけよ」


「いや、懐いてはいないけど……」


「天音ちゃんうっさい。黙らないならその悪い口にお仕置きしちゃおっかな」


「……黙ります」


「そう。いい子」


言いながら、私の頭を撫でる桜木は朱光を睨んだままだ。



「なーのーに。朱光ってばもう天音ちゃんと打ち解けて」


「いや総長、どう見ても打ち解けてはいないでしょ。からかっただけです」


「からかう……?俺の許可無しに天音ちゃんをからかったの?
 朱光いつからそんな悪い子になったの」



「……桜木さんこそいつからそんなめんどくさい男になったんですか。」



「えー、俺基本めんどくさがり屋だから、そのせいで相手に面倒をかけてる部分はあると思うよ?」



「……いや、そういうことが言いたいんじゃないんですけど……まあもういいや、俺が悪かったです」



「よし」