【完】黒薔薇の渇愛





モヤッとした。


今、奏子のことなんて関係ないのに。


やっぱりいい思い出にはなっていないその名前を呼ばれて、胸が痛む。


それも桜木に言われたから余計に。



「奏子は……今関係ないじゃん」


「今?今ってことは、これから先関係あるってこと?」


挑発にも似た、桜木の冷めた声にムキになってしまう。



「今も、これから先も関係ないよ!」


「本当に?」


「当たり前!!」


「へぇー、じゃあもう一回言ってくれる?
 てか誓ってくれない?」


「えっ?」


「これから先、『岡本奏子のことなんて思い出すことすらしない』ってね。」


「ーーっ」



「俺もねー、面白くないんだよね。
 ……いつまでも天音ちゃんの頭に彼がいること」