【完】黒薔薇の渇愛





ーーっと、その時。


「桔梗」


鈴の音の様な、静かに響く凛とした声が聞こえてくる。


混沌した状況の中、桜木の名前を呼ぶ女の人は
桜木の圧に呑まれずに、それでいてとても堂々としている。



綺麗な人……。


女の私が見惚れちゃうくらい

目鼻立ちがハッキリとしたハーフの様な、でもどこか大和撫子を思い浮かばせる美人。


黒い髪はちょうど二重を隠す様に伸ばされていて
腰の辺りまで透き通る様に黒髪は艶めいている。




そんな人が桜木の名前を呼び捨てにするんだもん。


ドクン……と静かに心臓が鳴る。



あれ……?なんで私こんなに不安がってるんだろう。



優理花(ゆりか)じゃん。
 なに、なんでいんの?」


「あなたがここに来るって……雪羽さんから聞いて」


「わお、雪ちゃん口軽ーい」


「いや……優理花さんが最近桜木さんに会ってないと言ったので、顔を見せるだけでもと思いまして?」



「なんで疑問形なの」



「だって俺、最近まで二人付き合ってるのかと思ってました」


「ーーッ!?」


誰よりも先に驚いてしまう。

だってあんなに私にベタベタ触っておいて桜木に彼女なんて……ムカつくというか悲しいというか。


あれ……だからなんで私こんなことにいちいち反応してしまうんだろう。


桜木に彼女がいたって……私に関係ないじゃん。