風が私の頬を撫でたとき、桜木の体が私から離れたのを知る。
それと同時に、赤い特攻服の男を挟むようにして
朱光さんと雪羽さんが立っているのが視界に入った。
「桜木さん、この男どうしますか?」
雪羽さんが冷めた様な表情で言うと。
ぐるんと桜木の顔が私に向く。
「あっまねちゃんは、甘い女だから当然この男許すんでしょー?」
「えっ……?あっ、うん」
「ふーん、つまんな。
でもいいや。天音ちゃんが許すなら許そっか。」
桜木の言葉に周囲がまたザワつく。
ずば抜けて驚いているのは雪羽さんと朱光さん。
ふたりの表情は、心霊現象を体験したかの様な青冷めた表情だ。
「おい雪、桜木さんが人を許すなんて。そんな奇跡に近いこと、今まであったか。
明日絶対雷落ちるぜ?」
「いや朱光さん、雷どころかこの時期に来もしない台風がやってくると俺は思います」
ふたりは顔を見合わせ、かなりしつれいな事を堂々と桜木の前で言ってみせた。
ふたりに挟まれている赤い特攻服の男は、ビクビクしながら気まずそうに腰を抜かしている。


