【完】黒薔薇の渇愛





ツンッと鼻の奥が痛くなって、目の潤いが今にも落ちてしまいそうなのを、鏡を見なくても分かってしまう。



真剣に言ったつもりだった。


だって桜木……いつ豹変して、私を敵視するか分からなかったから。


後のことを考えると、背筋がゾッとするけど
目の前の人が痛い思いしないなら、なんだっていいやと思えるのは
今まで危ない目にあっても、桜木からは逃げることができたから。


この人は本気で私を傷つける気がないと、勝手に思ってしまう。


実は思っているより優しいんじゃないかって。



だけど桜木は。


「……ハッ」


真剣に考えている私の思考をバカにしたように笑っては、踵を返し私の目の前にやってきた。


そしてそのまま、潰すようにその腕が、私を抱き寄せ、まるで蛇に締め付けられる様な苦しさが体を強張らせる。



「……!?!」


急に抱き締められて意味が分からない。


そんな私をニッコリと笑って抱いている桜木が一番……意味分かんないんだけど。