【完】黒薔薇の渇愛




その時。


「テメェ……まじでいい加減にしろよ!!」


男の野太い叫び声が、夕方の空に響く。


その声に驚いてビクついた私から、桜木は伸ばしていた手を引っ込め


土手の斜面に視線を滑らせた。



「なーに……いいとこだったのに。」


言いながら、見下ろす桜木の横で
私と朱光さんも並び、下を見る。



大勢の不良が囲うようにして見ていた光景は
白い特攻服の男と赤い特効服を着たどちらもチームの違う男ふたりの取っ組み合い。


互いの胸ぐらを掴みながら、怒鳴り声をあげていた。



「ね……ねぇ、あれって……喧嘩?」


無意識にチョンっと軽く、桜木の袖を掴みながら言う。

だけど、返事をしたのは桜木ではなく。


「あーあ、また始まった。
 まあ集会なんてものはさ、結局馬が合わない者同士が集まれば、そりゃあ喧嘩も始まるよなー」


そう朱光さんは何でもないように言って欠伸をする。


「……よくあることなんですか?」


「そりゃあね。……たまーに俺たちも喧嘩しちゃうけど、逢美相手に喧嘩売ってくるバカはそうは居ないよ。」


「……」


「だけど、まあ。ああいう名の知れてない族は、名を売るのに必死で……ああいう"うるさい"ことして悪目立ちするんだよね。」


「……」



「じゃなきゃ、俺らの眼中に入れないから。
 ……まあ、だからといってああいうウルサイ事されても興味持てないけど」