放課後、家への帰り道を歩いていると
今日はやたら、道路を走るバイクの数と音が多いなと耳につく。


ピタリと足を止め、目の前には自動販売機。


あの日、桜木に奢ってもらった同じココアが売っていて、色々思い出しちゃう。



前に、乱暴にキスされたのに。

不気味なほど優しくなった桜木が自然にした間接キスの方を思い出して

胸が高鳴るとか、私はどうかしている。



「……飲もうかな」


財布は出さず、無意識にココアのボタンに人差し指を向けた、その時。



「あっまねちゃん、こんばんはー。」


「っ!?」


背後からにょきっと顔を出す桜木に驚いて
肩が飛んでいっちゃいそうな勢い。



「さっ、桜木……なんでここに」


「んー、天音ちゃんが歩いてるとこ見かけたから?
 それよりまたココア?好きだねー、それ」


「いや、買おうとはしてないよ」


「そっ?ボタン押そうとしてたからてっきり。
 ……俺甘いのそんなに得意じゃないけど、まあ」


「……まあ?」


「まあ、天音ちゃんの飲みかけのココアは甘かったけど美味しかったかな~。」



「っ……!??」