温もりが思い出に変わる頃【完】

「どうして……、あなたが……?」


目の前の存在に、誰にも聞こえないくらいの掠れた声が漏れる。
いつも通り出勤して、いつも通り待機していた私に、いつも通り来客の知らせのコールが入り、いつも通り送迎車に乗ってラブホテルに向かって、でも待っていたのはいつも通りの小汚い男なんかじゃなかった。

マスクをしていてもわかる。サングラスをかけていてもわかる。帽子を深く被っていてもわかる。
ちょっとの変装で私の目を誤魔化せるわけないじゃない。
だって私はずっとあなたの顔が脳裏に焼き付いているのだから。

ーー須藤温(すとうあつし)さん……私の初恋の人。
その想いは今も尚続いている。