温もりが思い出に変わる頃【完】

「……憧れの人がいるんです。初恋の相手なんですけど、今もその人のことが好きで。だからその人は私にとって太陽のような存在で。何度も死にたいって思う度にその人のこと思い出したら、やっぱ死んじゃダメだって思えて」
「そうなのか。そんな風に思ってもらえて、その人は幸せ者だな」


なに、それ。違うよ、須藤さん。
だって今、私に死にたいなんて相談を私にしている須藤さんは、ちっとも幸せに見えないよ。

だけど「死なないでください」なんて言えない。
他人だからとかじゃない。寧ろその逆で。今までたくさん辛い想いをしてきたあなたのことを尊重したいから、あなたの意見を否定したくないんです。でも本当は死んでなんてほしくない。

頭の中がごちゃごちゃになった私は勢いよく立ち上がり、両手で須藤さんの両肩を掴んだ。
そしてとんでもないことを口走ってしまった。


「どうせならシませんか!?最後まで!」
「それはこの店の規約に反するのでは……」
「良いんです!私が須藤さんとシたいんです!」


店の規約では本番行為は禁止されているけど、私のなかの悪魔の声がバレなければ良いのだと囁く。
我慢できなかった。このチャンスを逃すのが怖かった。
想いを伝えられないとしても、せめて体を重ねることだけでもどうにか叶えてしまいたかったのだ。もし須藤さんが死んでしまうことを阻止できないのなら尚更。