温もりが思い出に変わる頃【完】

「良い年のおじさんが若い女の子相手に幼稚な相談をしてしまってすまないね」
「いえ、気にしないでください!それになんか、佐藤さんの気持ちちょっとわかるかもです。実は私も色々あって挫折しまくって借金できて親からも見放されて。まぁ無計画で才能のなかった私の自業自得だったんですけど。だけどそれが情けなくて誰にも本心を打ち明けられないまま、死んだら楽になれるかなって毎日考えていた時期があったので」
「じゃあなぜ君は死ななかったんだい?」


瞬時に返してきた須藤さんの問いに、私は少しの間固まってしまう。


「……それは……」


あなたがいたから。とは流石に言えなかった。
気まずくてつい目を逸らしてしまう。

さっき須藤さんは、自分のことを知らない人間と話したくてここに来たって言ってた。
ここで実はあなたのことを知っています、それどころか大ファンですって態度を覆すのはマズいだろう。
ここは濁した言い方をするのが利口な判断かもしれない。
私は本音を抑えるつもりで、膝に置いていた手をぐっと握り締める。