温もりが思い出に変わる頃【完】

「……あの。なんで死のうとしているんですか？」


沈黙を繋ぐのが恐ろしくなって、咄嗟に口から出たのは質問。
何をどこまで訊ねて良いかわからないけれど、話を聞いてほしくて来たのならこの質問くらいは問題ないだろう。

隣に座る須藤さんは、目線を床に落としたまま答える。


「うん。詳しくは言えないけど、僕昔仕事で大きな挫折があってさ。実は体に少し脚に後遺症も残ってしまって、そのせいで今まで出来ていたことが出来なくなってしまったんだ。その時誰からも求められていない自分に絶望してしまってね」


ああ、やっぱりそういう理由なんだ。それが率直な感想だった。

その後も、まるで自殺を計画している自分に、自殺の理由を再確認させるようにゆっくりと話を続けた須藤さん。
芸能界を引退してから色々なことに挑戦したけど、リハビリを頑張っても残った後遺症が枷になって、上手くいかないことが多かった。
若くして舞台で成功しただけに、挫折した時のダメージが計り知れなかった。
自分が役者として機能しなくなったことで、こんなにも周りから求められなくなるとは思わなかった。
色んなことが重なりすぎて、もうどうでも良くなった。生きる意味がわからなくなってしまった。

これが須藤さんの本音らしい。