夜のすべてでずっとすき



夜が、わたしたちの日々を透かす。



思い出も、速水も、夜も、ぜんぶ。ぜんぶ。溶けて、溶けきって、掬いあげることができなくなるその瞬間まで、透けていたとしても何度でも拾い集めるよ。



だから、まだいまは、どうしても。



速水と話をさせて。



速水の声が完全に聞こえなくなるまで、心に甦りすらもしなくなるまで、人類が数え切れない回数だとしても、ぜったいに話しかけるから。



どこかで、きっと、返してね。



わたしの姿もいつか、完全に夜に溶け込んでしまったら、そのときはまた、ぜんぶを掬いあげに速水を探しにいく。



「綾元、おれ、夜がすきだよ」



それじゃあ、わたしも、夜がすきだよ。速水が夜をきらっていないなら、憎んでいないなら、速水と過ごした夜のすべて、これから速水を思い出せる夜のすべて、ずっとすきでいるよ。



きっと速水は、わたしが夜をきらうこと、わかっていたんだ。



「速水、あのね」



わらうから、わらえたから。



速水の存在自体も、まわりの空気感も、過ごした時間も、透かした星も。



「わたしも、夜がすき」



今日を、この瞬間を、いままでを、憶えていて。




Fin.