わからなくて黙って見つめ返していたら、ムッとしたようで、私とは反対の方向に顔を背けてしまった

「…名前」

少し遠くから聞こえた声

名前?

何が、名前?

あ、もしかして

「裕、じゃなくて、裕一でしたっけ?」

「……」

でも、本人の前で普通に呼んでたけど、何も言われなかったしなあ

うーん、と悩んでいると



グイッ



「わっ」

「裕なのに、何で湊じゃない?」


えっと…


先輩の膝の上

後ろから抱きしめられて、動けなくなってしまう


九条先輩、好きな人がいるにも関わらず、この態度はいかがなものか…注意しなきゃな


そう思うんだけど、私の首もとに顔を埋めて


「なんで?」


なんて、寂しそうに、聞いてくるから
何も言えなくなってしまう