さすがにこのまま放っておいて、裕先輩が怒られるのは、可哀想なので、

「九条先輩?今、裕先輩のこと呼びましたよ?」

庇ったつもりだったんだけど…

「……だから、何で、裕」

「親がつけたんだよ!優しく、心の広い男になれって!」

「……はぁ、そういうことじゃない」

溜めに、溜めまくって溜め息を吐く九条先輩

んー、よく分かんないけど、今日は先輩の機嫌がきっと直るサプライズがあるからね!


「九条先輩!これ、どーぞ?」

「……ケーキ?」
「え、うまそー!羽華ちゃん、俺の分は?」

「裕先輩は、他の女の子に養ってもらってください?」

「羽華ちゃんのがいいんだよー!」


泣き真似をしている裕先輩のことは、放っておいて九条先輩に向き直る

「先輩、食べてみてください?」

「変なの入れてないよね?」

「愛がたくさん入ってます!」

「やっぱりいいや」


本当に鞄にしまおうとする先輩

今食べてるところが見たいのに!

止めようとしたんだけど、


「食べねーの?じゃあ、俺が貰うわ」


ひょいっと九条先輩の手からケーキの入った袋を取る裕先輩

「見た目はスゲーうまそうじゃん?」

そのまま、食べようとしてたんだけど…



パクっ



「「!!」」



「うま」




裕先輩の手から直接ケーキを食べたのはもちろん九条先輩


裕先輩の手には少ししかケーキが残っていない

どんだけ、大きな口で食べたんだろう…


しかも、美味しいって言ってくれた!


ニコニコと先輩の食べているところを見てたんだけど…



「ん?湊、どした?」

「九条先輩?」


どんどん、顔色が怪しくなっていく先輩


「……羽華、何いれた」


んー、基本はレシピを見て作ったから、強いて言うなら、


「味噌、入れました」


「「………」」

え、二人とも黙っちゃったよ?


味噌って、味が深いから、美味しくなると思って、ケーキの真ん中に潜めておいたんだけど…

「……お茶」

「ご、ごめんなさいいい!」

「ふはははっ!味噌って!ふふっは!」


苦しそうにもがく九条先輩

隣で涙を流しながら

「食べなくて正解だったわー」

と、笑い転げている裕先輩



しばらく、料理は禁止だな

お茶を飲んで、顔色を戻してくれた、九条先輩を見ながら、強く決意した