あれ、私おかしいぞ。
好きなのは近藤のはずで。だけどそれはもう過去形か。
でもだからってあーくんを思い浮かべるのはなぜだ。

思い返せば、私は本当に近藤のことが好きだったのだろうか。
一時的な感情に惑わされていただけじゃないのか。自惚れて調子に乗っていただけじゃないのか。喪女特有の、好意を寄せられていると勘違いしたらすぐ好きになってしまうパターンだ。
それを言ったら今だってそう。あーくんが私を本気で心配しているのは、もし私に何かあったら自分が元の世界に戻れなくなる可能性があるからに過ぎなくて。
だけど……、


“僕みたいに君のことを本気で心配している人だっているんですから”


あの時の微かに震えていたあーくんの声音には、それ以上の意味が含まれていた気がするのだ。
きっと、これは私の勘違いではない。
なぜだか確信めいたものを抱いていた私は、


「いるけど、今は秘密だよ」


恵美里ちゃんの質問に微笑み返したのだ。