『ちーちゃん、今年の誕生日は何が欲しい?』
『ちーちゃんはお利口にしてるから、お父さんなんでも買ってあげるぞー』


電話越しに聴こえる母と父の声。
耳障りなほどに弾んでいて、衝動的に苛立った私は遂にその言葉を口にしたのだ。


「特にない。いらない。お父さんとお母さんからプレゼントだけもらっても嬉しくないし」


以来、こうして手紙だけが送られてくるようになった。
あとは口座にお金を足しておいた分、自分で好きなものを好きな時に買ってください、とのこと。
この方が向こうとしても気楽なのだろう。私も気楽だから異論は無いけれど。
でも、本当はこういう結果を望んで、あんな発言をしたわけじゃなかったのにな。

私の両親は揃って高学歴であり、現在はとある大手会社に勤めている。
詳しいことは知らないし別に知りたくもないけれど、とにかく激務に見合ったお給金がもらえる有名な会社、というか機関、と言った方がしっくりくるようなところ。
まぁ私にはさして関係のないことだ。私が働いているわけじゃないんだし、将来その道を進められても、我が子にこんな思いさせるような仕事なんて絶対目指したくないし。

そしてそんな二人が社内恋愛から結婚と、トントン拍子にいった結果生まれた子供が私なのだけれど、前述の通り両親は多忙のため、二世帯として建てたこの大きな一軒家で一人暮らしをしているのだ。