「いや、産婦人科だよ。」

「え!…そうなの⁉︎」

「ああ。家は兄貴が継ぐし、俺は自由にして良かったんだけど、どうせなら関連のあるところに行こうと思って。」

「それで産婦人科?」

実家が産婦人科医院をしていない限り、若い男性医師にはハードルが高いのが産婦人科だ。実際、今は出生率も下がっていることから、産婦人科医の成り手は少ない。

「うん。実は憧れている先生がいるんだ。俺が目指す分野では若くしてかなりの頭角を現している。」

「…へぇー。そうなんだ。
でも、国内留学って…」




「…花?」

え?この声は…

「え?寿貴先生⁇ あ、今お昼休憩?」

「あ、あぁ。A terraceでランチ食べようと思って。」

「そうなんだ。私達も今からなの。」

「…そ、それより花。その…」

「桜川寿貴先生ですよね?」

突然、昇平が寿貴先生に話しかけた。
ん?…なんか、昇平の目がキラキラしているような…

「あ、ああ。そうだが…」

「藤田昇平です。
3時にご挨拶に伺う予定だったんですが、明日からお世話になります。」