その後、このスピーチを受けたからか、少し驚く出来事がおこる。

披露宴終盤、新郎からの挨拶があった。
黒のタキシード姿の周さんが、参列した来賓への挨拶の言葉を述べた後のことだ。

「……先程、親友の寿貴が、とんでもない爆弾を落としてくれました。
『コイツなに言い出すんだ⁉︎』と最初は思いました。
けれど、よく考えたら、何も間違えてないことに、今更ながら気付きました。
私は…いや、俺は幼い頃から、心の中で秋香は俺のものだと勝手に思っている自分がいました。いつでも、秋香は俺をずっと想っていてくれていると、無条件に信じていたのです。
今は…仕事中も同じ場所にいるのですが、一緒にいればいるほど、店先に置いている秋香が気になって仕方がありません。これが、独占欲ってやつなんでしょうね。まさか寿貴にそれを言い当てられるとは思っていませんでしたが…。
親友の観察眼には驚かされました。
若女将として店に立つ秋香は、確かに美しい。
でも、それが秋香の努力の賜物で、俺への愛情と、松寿庵に嫁ぐ覚悟なのだと言うことを、これからも忘れずにいたいと思います。
秋香は……俺の自慢の嫁です。」