「なんで俺なんだ⁉︎」

「親友だからでしょう。」

「春彦だっているじゃないか!」

「親族じゃない。」

「……」

春彦先生は新婦の兄だよ。

…何をゴネているのかと言うと…
結婚式の招待状に入っていたスピーチ依頼の栞に、1週間前の今になって気付いたのだ。
私にしてみれば、この栞を見つけなくても、スピーチを依頼されるのは寿貴先生しかいないと思っていたのだが…。
新婦の兄である春彦先生が、友人代表の挨拶に立てるわけがない。

「でもさ、寿貴先生、普通に患者さんの前ではお話してるじゃない? それに学会で発表したりもするんでしょう?人前に立つの、慣れているでしょう。」

「無理。それとこれとは別!
俺はこう言うの、苦手なんだよ。
しかも周だぞ? 事実をそのまま言って良いのか? 俺に頼むくらいなんだから、良いんだよな? 全部知ってて、祝いの言葉を言えってか? 出来るか!
くそ〜! 春彦め。アイツだけズルいじゃないか。ずっと親族で逃げ切るとか、許せん!」

もう〜ワガママ言わないで!

「まだ今からなら間に合うじゃない。
原稿考えて練習しよう!
なんなら私、練習付き合うよ?
私に出来ることがあったら言って?」