「あの〜。センター長?
ご注文はいかがいたしましょう?」

俺達が立ち話を続けているので、A terraceのスタッフが痺れを切らしたようだ。
本来なら席を確保してすぐ、自分で注文しに行かなくてはならない。
ここは忙しいスタッフの休憩場だ。次の予定に間に合うよう、気を遣ってくれたんだろう。

「あ、藤田先生は何にする?見たところコーヒーしか頼んでいないみたいだけど。
ランチメニューは3つだけなんだ。
日替わりパスタ
日替わりサンド
ボックスランチ
どれもオススメだよ。花が今でもメニューを決めているんだ。」

「俺はさっき花が勧めてくれた日替わりパスタにします。」

「…じゃあ俺もそれにしよう。
日替わりパスタ2つと、ボックスランチ1つで頼むよ。」

「かしこまりました!」

そうして俺達はやっと椅子に腰を下ろした。
天気が良くて、A terraceには沢山の病院スタッフや患者さんが、眩しそうにしながらもランチを楽しんでいた。
花のもたらした癒しは、すっかりこのベリヒルホスピタルに根付いている。

「ここは居心地の良いところですね。
病院自体もゴージャスで、素晴らしい建物だけれど、この温室のような空間は他の病院では味わえないものです。
ここのスタッフは恵まれている。」

「このA terraceは昨年の夏に中庭の大部分を巻き込んでリニューアル工事されたんだ。発案者は花だ。ちょうど俺達が出会った頃に思い付いたらしく、毎日目をキラキラさせて打ち合わせしていたよ。」