その頃、玲奈と優人はオフィスビルの五四階にある高級レストランで食事を終え、五七階の展望台へとやって来ていた。

展望台から煌めく夜景をなだめながら肩を寄せ合う二人。

他にも人がいるというのに二人きりの気分になってしまって……。

キスとかしたくなっちゃうな……。

なんて思いながらドキドキと胸を高鳴らせていると、優人がクスリと微笑み大人の余裕を見せる。

「玲奈どうしたの?何だかソワソワして……」

もしかして、キスをしたいと思っていることに気づかれちゃったかしら……。

更にソワソワと落ち着きがなくなってしまう。

「えっと……。何でもなっ……」

玲奈が言葉を言い終える前に優人の唇が重ねられていた。

「かわいい。早く俺だけの物にしたい」

優人の言葉に玲奈はキョトンとした。

「私は優人さんのものですよ」

サラリと言った玲奈の言葉に優人はうろたえた。優人は握り絞めた右手で口元を押さえ、ぷいっと玲奈と見つめ合っていた目を逸らした。

「お願いだからそう言うことサラッと言わないで、帰したくなくなるから」


普段しっかりしているくせに、こういう時は抜けている天然な玲奈。

優人は一生こうやって玲奈に振り回されるのだろうなと思った。

それで良いと……。



「それより、ほら……見てごらん。俺たちが暮らすレジデンスが良く見えるよ」

優人がごまかすように外に向かって指を差した。その先にはレジデンスがあり、窓から温かな光が漏れていた。

もうすぐあそこで暮らすことになるんだわ。

好きな人と一緒に暮らせる。

なんて幸せなことなのだろう。

玲奈は幸せで胸がいっぱいになり、自分の胸の前でグッと拳を握りしめ薄らと瞳に涙を溜めた。玲奈の様子に気づいた優人が心配そうに玲奈の顔をのぞき込む。

「どうした?大丈夫?」

「大丈夫です。胸がいっぱいで……幸せだなって思って……」

泣き笑いのかわいい表情で、玲奈は優人を上目遣いで見上げた。

「ぐっ……」

その時、優人が何かをこらえるような声を漏らしていた。