*****



「ふぅーー」

玲奈が溜め息の様な吐息を吐くと、男性社員達の視線が釘付けとなり、皆が頬を染め玲奈を見つめていた。

そこへ、出勤して来た萌の絶叫に近い叫び声がオフィス内に響き渡り、玲奈はビクリと体を震わせた。

「れっ……玲奈さん!!!!」

「萌さん、朝からどうしたの?」

「ちっ……ちょっとこっちに来て下さい」

萌は自分のポーチを持ち、玲奈の手を引っ張ると、女子トイレへと押し込んだ。玲奈と二人、鏡の前に立つと、ポーチの中からコンシーラーを取り出した。

「玲奈さん首の所、キスマークついてますよ。コンシーラーで隠しますからね」

「えっ……」

朝、鏡を見た時にそんな物は無かったと思ったけど……。

首を傾げる玲奈を見ながら萌が吹き出した。

「ぷっ……副社長ってば結構子供っぽいことするんですね。玲奈は俺のものって印つけたんですよ。しかも玲奈さんに消されないように、玲奈さんから見えない首の後ろに……」

玲奈はなんともいえない恥ずかしさに顔を赤く染めた。

萌は玲奈の幸せそうな、その様子に頬を緩めながらコンシーラーでキスマークを消していく。

「よっぽどキスマーク消されたくなかったんですね。でも……うちの男どもは集中出来ないだろうから、やっぱり消さないとダメですね」

「どうして、みんなが集中出来ないの?」

「玲奈さん気づいてないけど、今日の玲奈さん体中からフェロモン出しまくってますよ」

フェロモン?

「そんな玲奈さんの首のにキスマークまであるの見たら、男どもが集中出来ないに決まってます」

「そっ……そうなの?」

そういうものなのかしら?

特にいつもと変わらないと思うけれど?

メイクもスーツもいつもと変わらない。

また首を傾げる玲奈に萌が嬉しそうに微笑んだ。

「玲奈さんが幸せそうで良かった。あっ、そうだ!!加湿器の試作発表会が成功して、まだ日野くんのこと褒めてないですよね?このまま準備しちゃいましょう」

萌は手早く玲奈の眼鏡を取るとメイクを始めた。

日野くん褒めるのに何でメイクが必要なの?