「はっ……注意書きがあろうが無かろうが、そんなことは関係ない。娘を傷つけたことには違わないのだろう。お前達は何処の会社の人間だ?」
「私どもは雑貨を主に取り扱っておりますlife(ライフ)という会社の人間です。
玲奈がそう言うと目の前の中年男性が馬鹿にしたようにフンっと鼻で笑った。
「ああ、一般企業のくせにオフィスビルにある会社だな。まったく、たいした企業でもないくせに」
完全に娘の話からそれってしまっている。
この人は一体何が言いたいのかしら?
すると中年男性はまた馬鹿にしたように玲奈達に向かって言葉を吐き捨てた。
「お前達とうちの娘は違うと言うことだよ。うちの娘は温室中の温室育ち、君たちのような一般企業で働く雑草とは違うのだよ」
「・・・・」
周りにいたお客様達をも絶句させる発言に、玲奈の心の声はしらけていた。
親馬鹿だ。
それもダメ親。
だから娘もわがまま放題。
はぁーー。玲奈が溜め息を付いたとき「あれ、神川社長じゃないですか?」その声に振り返るとそこには優人が立っていた。
サラリとした黒髪、優しそうな眼差しにブランド物のスーツを着こなし、爽やかな笑顔を向けるその姿はまさに王子。
「これはこれはA&Bの副社長、優人さんじゃないですか。百周年記念パーティー以来ですな。うちの娘は優人さんに会ってからというもの、あなたに夢中なんですよ。百合亜こっちへ」
そう言われ前に出てきた百合亜は頬を赤く染め恥ずかしそうにモジモジとしていた。
先ほどまでの剣幕はどこにいったのか……。
皆がその様子に目をまるくしていると、神川社長と呼ばれた中年男性がまた親馬鹿ぶりを発揮する。
「一条のお嬢さんも美しいですが、うちの娘はもっと美しいでしょう。一条から神川へ乗り換えてみてはいかがでしょう?」
その言葉を聞き、優人の優しい瞳がスッと細められ氷点下の冷たい眼差しへと変わっていく。そして最悪のことに優人は気づいてしまった玲奈の右手の甲が赤くなっていることを……。
優人は神川社長を無視して玲奈の赤くなっている手をとった。
「玲奈これどうしたの?赤くなってる」
「えっ……あっこれはちょっと……」
チラリと百合亜に視線を向けると百合亜がにらみ返してきた。それを見た優人は瞬時に理解した。
なるほど……。


