少女が亡くなったのは、不慮の事故だった。

 下校途中、工事現場から落下してきた鉄骨の下敷きになり、救急搬送されたものの、ほぼ即死の状態だったという。

 小学校を卒業し、中学校へ進学したばかりの小さな女の子が、事故で亡くなった衝撃は、あまりにも大きく、母親は泣き崩れ、そのまま精神病棟へと入院することになった。

 父親は建設会社を相手取り、裁判を起こす予定だという。

 そして、その爪痕は、ひとりの少年の心にも深く刻まれていた。

 幼稚園から小学校まで、少女とずっと同じクラスだった少年。

 クラスは離ればなれになってしまったが、中学校も同じだった。

 二人はいつも、ずっと、一緒だった。

 いじめに遭い、泣いていた少女のそばにはいつも少年がいて、少年がクラスメイトと喧嘩をして、傷だらけになったときは、いつも少女が手当てをしてくれていた。

 そんな二人が惹かれ合うのは、必然だったのかもしれない。

 けれど、些細な喧嘩をしたあの日。

 少年は少女と一緒に下校することはなかった。

 あの時、一緒に下校したなら。喧嘩をしなければ。

 そんな思いに縛られて、少年の心は立ち止まり動けなくなってしまった。