この先の未来をぼくは、ずっと願ってる。

 一番伝えたい言葉なのに、涙が邪魔をして声にならない。

 その間にも、少女の重みがどんどんと薄れていく。指先が透け始め、自身が抱き上げた腕が、少女の身体越しに見えてしまう。

 もう、時間なのか。
 まだ、何も伝えられていない。

 あと、少しだけ。

 そう思うのに、時は残酷に過ぎていく。

 このまま、一緒に消えられたら。幸せな夢が永遠に続くだろうか。きみのそばに、ずっと居られるだろうか。そんなことばかり、考えてしまう。

 お願いだ。逝かないで。ぼくを置いて、居なくならないで。

 溢れる涙で、視界が滲み見えなくなる。

 きみの優しい声が聞こえる。

『──お誕生日、おめでとう。……あの時、誕生日プレゼント、渡せなくて……ごめん、ね』

 消えかける少女の手に握られていたのは、ブルーのリボンで、丁寧にラッピングされた、ミントグリーン色の小さな箱だった。

 少年が箱を受け取ろうと、震える手を伸ばした瞬間──。

 少女の姿は陽炎のように形もなく消え去った。

 コトッと小さく音を立てて落ちた箱は、無残に床に転がり、合図となって、この異空間に残された少年の姿もまた、消失した。