少年が恋い焦がれていた少女は、時を止めたままの姿で、真っ白なこの異空間に倒れていたのだ。

『起きろ! おい、起きてくれっ!』

 身体を抱き上げ、懸命に声をかける。
 すると、少女は反応を見せた。

『──? どうしたの?』

 あの時のままの幼い声で少女は言う。

 やっと、会えた。それだけで、嬉しかった。

 例え、これがぼくの身勝手な幻想だったとしても、夢の中だとしても。きみに会えた。声が聞けた。姿に触れられた。それだけで、良かった。

『泣かないで』

 少年の涙を拭う、少女の小さな指先は、熱を帯びていて、とても柔らかで、優しい感触がした。

『……ごめん』

 言いたいことは沢山あるのに、どれもすぐには言葉に出来なくて、情けなかった。

 ──ずっと、好きだった。

 たった一言が伝えられなくて、喉を詰まらせる。