「俺、行きたい所があるんだ」


航平はそう言ってニッコリ笑った。


「きっと、ひなこの為にもなるよ?」

「へぇ?どこ?」


あたしが首をかしげると、航平は笑って首を振った。


「それは秘密!24日10時、待ち合わせは駅前公園の噴水のトコで」

「隣に住んでるのに?」


あたしがさらに首をかしげると、航平は「雰囲気、雰囲気」と言って笑った。


「ほら。どうせならデート気分を味わいたいじゃん!?」


デートじゃない・・・そう言ったのにと思いつつ、あたしは航平の笑顔につられて思わず笑った。


目の前で笑っているのは、あたしがよく知っている航平。


高校を卒業したら、別々の道へ進む。

一緒に過ごせる期間は僅かだという事が、あたしの中で重くのしかかるのか、航平がいつものように笑ってくれるなら、デートでも何でもいい・・・そう思えた。