「ルシア!息を吸うな。ちょっと待ってろ」そう言ってご主人さまは、自分のスカーフを取ってぼくの口に当てた。
「ご主人さま!」
「大丈夫だ。後数メートルも進めばこの町から出られる。安心しろ」そう言ってご主人さまは、顔を歪めながらぼくの手を引いて走った。
 あと少しの時だった...
「ゴホッゴホッ」とご主人さまは膝を地面に着いた。
「ご主人さま!」
「後、少しだ...歩く、ぞ...ルシア。ある...ける...よな?」ご主人さまの笑みは物凄く頼りなく、苦しい表情が垣間見えていた。