次の日...
 「ルシア。起きろ」そうご主人さまに起こされぼくは目を覚ました。
「おはようございます。ご主人様」ぼくが言うと、
「おはよう。ルシア。さぁ出発するぞ」と言いご主人さまは、フードを深く被った。
ぼくも真似してフードを被る。
「さぁ、行くぞ」と言われ、ぼくはご主人さまの後を追った。
 洞窟を出ると、吹雪だった...風が強く吹いている。
「ルシア、僕に捕まってろよ」そう言って手を出してきた。ぼくがその手を掴むとご主人さまは、ぼくを引き寄せて自分のポンチョの中にぼくを入れた。
「服に捕まってなさい。弱まったら下ろす」そう言ってご主人さまは、走り出した。その先にあったのは崖だ。
「ご主人さま!」ぼくが言っても風のせいか声が届かない。フワッとした感覚になり、ぼくとご主人さまは崖から飛んだようだった。
 「ルシア、目を開けてみなさい?」そう優しく言われて、ぼくは閉じていた目を開けた。
「うわぁ!」そこは雲の上だった。
「ハハ!」とご主人さまは嬉しそうに笑う。
「風がちょうど良い具合に吹いててな。このまま、目的地まで行こうと思ったんだ」と言った。
「目的地ですか?」ぼくが訊くと、
「あぁ、春の湯煙って知ってるか?これからそこに行くんだ」そう言った。
「はるのゆけむり?」ぼくが不思議がっていると、
「知らない?僕らがいる国から出た事ないのか...分かった。着くまでのお楽しみだな」と歯を見せて笑ったご主人さまは、ぼくの目を片手で塞ぐと、
「落ちるぞ」と言った。