川に着くとご主人さまは、岸辺に座って棒を長くし始めた。ぼくが隣に座ると、
「この棒は釣り竿だ。ここの紐に針があるだろ?ここに餌をつけて釣るんだ」と言って、釣り竿を川の中へ投げ入れた。
ぼくも真似してやるが、上手くいかない。ご主人さまは、隣でぽんぽんと釣り上げていく。
「う...」ぼくはちょっとだけ不貞腐れた。
ご主人さまは、ぼくを見ると、
「そんなに、拗ねんな。まだ、初心者だ。今は、無理でも何年後かは僕みたいにできる」そう言って頭を撫でてきた。
 数分後、ご主人さまは、今も何匹か釣っては、小さな魚を逃している。ぼくは、ずっと釣れない...
「ご主人さま...」と見ると、楽しそうな顔をしている。ぼくの声は届いていないようだった...ぼくは、ちょっとだけ拗ねた。ご主人さまは、たくさんのことが出来る。ぼくは、まだ届かない...