赤根(あかね) (ばく)って、
「中井に似てるんだ」
「……こーら。教師を呼びつけにする? しかも本人の前で。えっ?」
「わっ、ごめんなさい!」
 あわてて謝ったけど、あたしの頭の中は、その発見でいっぱい。
「おっといけない。授業中、授業中。クマちゃんに怒られないうちに、さ、コートにお帰りなさい」
「クマッ……」
「しい一っ。ないしょ、ないしょ」
 そう言うと中井は鉛筆を持った手をヒラヒラふって、早く行けって合図する。
 近藤のことクマだって。
 うーん、中井ってなんだか…好き。
 あせって目をくるくるしてるとこなんか、本当に大好きだ。
 それなのに、なまいきなぁ!

 赤根 麦。
 中井に似てるなんてゆるせない。

「ふふ。じゃね、相田」
「あ。はい」
 あわてて立ち上がって頭をさげる。
 中井は、スケッチブックまで振りながら校舎のほうにもどっていった。
「美術部かぁ。……入ろうかな。へへ」
 そのときちらっと風でまくれて見えたスケッチブックには、ぱっと見でもそのリアルさで目を引かれた、細身で白シャツ白短パンの…少年?
「ま…さか」
 あれ、アカネバク?
 まさか、ね。

 赤根と中井が似てるなんて。
 おかしなことを思ったりしたから、そう見えたのよね。
「服の模様にまで、キョーミなかったのかもしれないしさ」
 だけど――…。