「病院てさ」麦が、青いパジャマの袖で顔を隠してぽそっと言った。
「患者にあわせてるから暑いんだよな。……おれも、冬で…風邪ひいた」
「…………」
ああ。
お母さん、亡くなったんだっけ。
「いろいろ知られちゃったな、おまえに……」
「ごめんね」
「なんで謝るんだよ。おまえでよかったって思ってるんだから」
麦……。
「けど、中井…先生には、悪いこと、しちゃったな」
「…………」
心臓に針が刺さった。
痛い。
「おれ……」
やめて!
「おれ、もうひとつおまえに…」
やめて!
大声を出して怒らせたくないから、両手で口をおおって首を振る。
「おれ、もうひとつおまえに言いたいことがある」
「言わないで!」
思わず叫ぶみたいになっちゃって。
病室中の視線をひとりじめ。
あわてて立ち上がって、180度にぺこぺこ。
おじさんたちは驚いた顔をしているけど、手で大丈夫だと示して笑ってくれた。
「……言わないで」
椅子に腰をおろして麦だけに聞こえるようにささやく。
「…そうだろうと思った。それ誤解だぞ」
「…………ぇ」
なんて?
ぽかんと口をあけている自覚はあった。
あったけど笑われるなんて。



