「気にすることないよ」
「え?」
先ほどのおじさんにフィルくんを任せて船長室に戻っている途中、前を行くアヴェイラがこちらを振り向かずに言った。
「あんたはフィルを助けたんだ。良いことをしたんだから胸を張りな」
それを聞いて目を瞬く。
(もしかして、励ましてくれてるのかな)
私は笑顔でお礼を言う。
「うん。ありがとう」
――ひょっとしたら、術士であるアヴェイラにも同じような経験があるのかもしれない。
その真っ直ぐに伸びた背中が、ふいにラグと重なって見えた。
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