おかげで着いた町々で、すぐに宿と食事と替えの馬を得ることができた。
一日の終わりにはたっぷりの食事と、清潔な寝床で疲れを癒すことができるとはいえ、何時間も馬に乗り続けるのが、こんなに大変だとは思わなかった。

夜には、ローサという宮女が、擦りむけたわたしの内腿に軟膏を塗って包帯を巻いてくれた。
ローサは忍耐強い性質でなにかと機転がきくということで、姫様の信頼も厚く、随身に選ばれたそうだ。人に世話になりっぱなしの自分が情けない。

「余計な力が入ってしまっているのよ、ミカコ。手にマメもできてしまって。手綱を握りすぎだわ」
優しくローサが言う。

「なかなか馴れなくて。お尻も痛いし」
ついつい泣き言を口にしてしまう。

「お尻当てを厚くしましょう。少しは楽になるはずよ」

「ありがとう。それにしても姫様はお体だいじょうぶなのかしら。こんな長旅」
温室の花のように暮らしていたひとが。

「ご出身のカリンガは緑豊かな国で、姫様も乗馬がお好きだったそうよ。問題はお体より胸のうちではないかしら」
ローサは悲しげに目を伏せる。