翔んでアルミナリア

道の前後には、祭りへ向かう人々が歩いている。
広場が見えてきた。

独特な節回しの笛に、太鼓、(かね)の音がからみあう祭囃子。デジタル音源だろうけど、情感のある調べに、夕暮れの空が雰囲気をかきたてる。
浴衣姿の人の群れのあいだに、紅白の幔幕(まんまく)が張られた舞台と、広場の中央にどっしりと組まれた櫓が見える。

「そろそろ点火じゃないかな」
蓮くんがさりげなくわたしの手をとって、足を早める。

周囲のざわめきが大きくなってきた。
櫓の周りにはロープが張られ、その周囲を人垣が幾重にも取り巻いている。

例によって民間伝承だけれど、この篝火には願いごとを叶えてくれるという言い伝えがあり、特に点火の瞬間が一番霊験あらたかだという。
流れ星と同じで、めでたいと思うと願いごとをしたくなるものらしい。

わたしと蓮くんも、人の背の隙間から櫓が見える位置に陣どった。