翔んでアルミナリア

「あの薄桃色の小さい蓮の花、カリンガの蓮なんだって。後宮の庭園の池にも同じ蓮があって、姫様が教えてくれたの」

蓮は生命力が強いのか、はたまた水が合ったのか、カリンガの蓮は少しずつ株を増やし、こうして宮殿の水路にも株分けできるようになったという。
といっても姫様はこの水路を目にすることはできないのだけど。

「この世界にも蓮はあるんだな〜って」
ファンタジー世界なので、名称は元の世界にあるものと架空のものが混ざっている。
例えば、パンはこの世界でもパンだけど、チーズによく似た乳を発酵させた食べ物の名前はスオミという。
ときどき言葉が分からなくてまごつくこともあるけど、言語自体は日本語なのでどうにかなっている。

「そりゃまあ、俺の名前でもあるからな」
隣でぼそっとつぶやく。

「そうか、蓮くんか」
創造主の名前の花なら、この世界にあってしかるべきだ。

泥中(でいちゅう)(はす)。と蓮くんがつぶやく。

「でいちゅ…?」
よく分からなくて聞き返す。