翔んでアルミナリア

「もちろんそれは、姫様を守るためでもあるんだろう」
蓮くんが思案を巡らせるように続ける。
「学び舎の連中から聞いた噂なんだけど、どうも二ヶ月くらい前に後宮でなにか “事件” があったらしいんだ」

「事件…ってエストライヘル師が言ってた “こたびの事態” のことかな?」

「関係はあるはずだ」
蓮くんはうなずく。
「いかんせん閉ざされた後宮で起こったことだから、どんな事件かまでは誰も知らなかった」

「知ってるかどうかわからないけど、宮女仲間に聞いてみるよ」
これでも後宮勤めだ。

「うん頼む」
真剣な面持ちだ。

会話がひと段落して、ふたりでなんとはなしにベンチの前を行きかう人を眺める。
遊歩道を貫く水路には、手入れの行き届いた水生植物がゆるやかな流れにたゆたっている。

「あ、ねえねえ、あの(はす)
気づいて、指差しながら蓮くんに話しかける。