翔んでアルミナリア



「見て見て、実花子」
蓮くんが膝の上のパンに両手をかざす。
導力をパンに集中させるうち、ことり、と頼りなくパンが浮かび上がった。

手のひらの位置を上にしていくと、そのままふらふらとパンも持ち上がっていく。相当な集中力と気力を注ぎ込んでいることが、張り詰めた横顔から伝わってくる。

時間をかけて慎重に持ち上げて、ようやく顔の前の高さに達した。
ぱくっ、と蓮くんはパンに噛みつく———と、導力が途切れたのか、ぽさっとパンは膝に落ちてしまった。

「導力を使いながら、他のことができないんだよな」
もぐもぐと口を動かしながら蓮くんがつぶやく。

「でもすごいよ! こんなに早く導力が使えるようになるなんて」
まだアルミナリアに来て、十日くらいだ。

「いやでもさ…」と蓮くんは浮かない顔だ。
「ありったけの力を注いで時間かけて、口までパンを持っていくのがやっとって。手で持ったほうがよっぽど早いよ。これじゃあ、超能力じゃなくて低能力だな」