翔んでアルミナリア

こちらに揺さぶりをかけるように、暗闇の先から悲痛な少年の声が響く。
「姉様!」

「マリス!」
血を吐くような叫びとともに、エレオノア姫が顔をおおって膝から崩れ落ちる。
抱き止めたのはむろんリュシウス帝だ。
姫様が持っていた箱が地に落ち、蓮の実がコロコロと転がっていったけど、もはや気に留めるものはいなかった。

三年ぶりの姉弟の再会がこんな形だなんて、あんまりだ。
憎しみにこめかみが痛いくらいに脈打っている。絶対に許せない。

「さて、どうされます?」

音無しの構えをとっているこちらを懐柔しようと、クルシュタルが畳み掛けてくる。
「素直に神の遺産を渡せばいいのです。さすれば生き別れた姉弟が再会できるのですから」

黙れ、卑怯者! と言い返してやりたかった。

我が師、と皇帝がささやき声を出す。リランの聴覚を警戒しているのだろう。
「遠からず奴らが洞窟を爆破するとして、導力で防げる手立ては?」

エストライヘル師がわずかに、しかし厳として首を横に振る。
「私も想定はしましたが、地上までの地盤の厚さを計算すると持ちこたえられませぬ。よしんば私とセレマイヤとで一時(いっとき)崩落を防いだところで、死が少し先に延びるだけです。地上への突破口のために閉ざされた空間で爆破を起こせば、その爆轟(ばくごう)で八つ裂きになる運命が待っております」