翔んでアルミナリア

「権謀に長けたクルシュタルのこと。交渉を持ちかけてくるでしょうぞ」

「となると、神の遺産とマリス王子の交換が条件になるであろう。(がえ)んじざるをえん、だがーーー」

こちらには神の遺産がないのだ。交換には応じられない。
逃げ道はなく、人質を取られ、交渉の手札もない。いる場所と同じく八方塞がりだ。

頼みの綱は優れた導師が二人と、ずば抜けた知覚と明晰さを備えた皇帝の存在だけど、向こうにも導師と竜の血族である皇弟がいることを考えると、優位に立っているとはいえないだろう。

「仕掛けてくるのは彼奴等の側でありましょう。こちらから動く道理はござりませぬ」

ようするに相手の出方を待つしかないという状況で、わたしも必死に無い知恵を絞る。

「リランは気の長いやつじゃない」
という皇帝のつぶやき通り、すぐに呼びかけが聞こえてきた。

「アルミナリア帝国皇帝リュシウス陛下、カリンガ王女エレオノア姫、大導師エストライヘル、導師セレマイヤ。其方らに告ぐ」
朗々とした親和の響きさえ含んだ声だった。
二人名前が抜けているぞと、つまらないことにムッとする。

「導力で増幅しておりますが、クルシュタルの声に違いありませぬ」